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使いやすい道具 (page4/4)

Stainless Steel - ステンレス鋼

 「ステン」、「ステンレス」、「サス」と通称されるステンレス鋼(以下ステンレス)が誕生したのは、1912年頃。生まれて89年の比較的新しい特殊鋼です。「Stain=さび、汚れ、しみ」、「less=.のない」という文字通り「さびを生じない」鋼という意味で、クロム(Cr)を13%以上入れたものと、クロムにニッケル(Ni)を加えたものと2種類あります。この鋼はそれ自身がさびにくいのではなく、 表面にできるクロムの酸化皮膜(一種のさびの薄い皮膜)が安定なためさびないのです。ニッケルはこの酸化膜の密着性が良くなり、耐食性が更に向上するので添加されます。ちなみに、日本のステンレス製造技術は世界最高水準で、生産量も年間324万tと世界一です。

 それでは、刃物には炭素鋼(以下、鋼)とステンレスのどちらが適しているのでしょうか?「鋼に比べ、ステンレスはすぐに切れなくなる。」とおっしゃられる方が多いのですが、この原因は何なのでしょうか?切れなくなる刃先のメカニズムとはどういうものなのでしょうか?
 ステンレスに多く含まれるクロムは、酸化皮膜を作るという特徴の他に、靭性(粘り強さ)が高くなるという特徴があります。左下図が鋼の切れなくなった刃の状態で、右下図がステンレスの刃が切れなくなった状態です。


Carbon steel

Stainless steel

 鋼の場合はステンレスほど粘さがないので、刃先は徐々にこぼれていきます。(もちろん目に見えないほどの小さな磨耗です。)結果、刃は横から見るとノコギリ状になり長い間「切れているような感じ」がします。

ステンレス包丁の場合、磨耗するのではなく、シワが寄って縮こまるような状態にたたまれます。
 粘り強いためにこうなってしまいます。


 ステンレスはサビを防ぐためにクロムが含有してあるので鋼ほど硬度を出すのが難しく、また高価なものになってしまいます。刃先硬度については鋼に比べ、落ちると考えて良いでしょう。しかし、ステンレスの場合、硬度の点で幾分劣っても鋼のようなもろさがなく、刃こぼれが少なく、対磨耗性に優れています。そのため、使い始めてからの切れ味の持続性は良い訳です。たとえば同じ硬度であれば、ステンレスの方が鋼より「刃持ちは良い」のです。



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